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アイヌの無形文化を伝承するアニメーション制作への思い

『私の育てた子グマ』より
『私の育てた子グマ』より - (c)Frpac

 北海道で開催された第5回新千歳空港国際アニメーション映画祭で北海道150年事業特別プログラム「アイヌのお話アニメ『オルシぺスウオプ』」と題して8本の口承文芸作品が上映され、制作を行ったスタジオロッカの高橋慶プロデューサーとアニメーション作家の小笠原大が制作秘話を語った。

【写真】いにしえのアイヌの暮らしに触れられるお話アニメ8本

 作品はいずれも、公益財団法人アイヌ文化振興・研究推進機構がアイヌの無形文化の紹介資料やアイヌ語の入門教材を目的に2012年(平成24年)から実施している口承文芸視聴覚資料作成事業で制作された短編アニメーション。同映画祭はこれまでも紹介してきたが、特に今年は北海道命名150年を記念して特別プログラムを組み、物語が独特のメロディーに乗せて語られていく口承文芸作品をフィーチャーした。

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高橋慶プロデューサーと小笠原大
スタジオロッカの(写真右から)高橋慶プロデューサーとアニメーション作家の小笠原大

 上映されたのは、ある夫婦と子グマの絆を描いた『私の育てた子グマ』、女神と化け物の攻防戦をユーモラスに描いた『六つ首の化け物』、悪い心を抱くと災いが招くという戒めを歌った『空の上の雪かき』などバラエティーに富んだ8本。日本語字幕も付いており、自然と共存しながら独自の文化を育んできたアイヌの人たちのいにしえの暮らしに触れることができる。

 アニメの制作は毎年3~4本。日本語に訳された物語から作品のイメージを膨らまし、原画となるイラストを財団に提出。そこから作品の方向性を決めていくという。高橋プロデューサーは「普通のアニメと違うのは、最初に古い音声があって、その音に合わせて全体を決めていくという作業になります。ただ作風などについての自由度は高い」。その結果、作品ごとにタッチの異なる作品が生まれ、アニメーターにとっても挑戦のしがいのある企画なのだという。

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六つ首の化け物
『六つ首の化け物』より - (c)Frpac

 ただし、音声は新しく録音し直すため、現時点で歌える人を探す必要があるという。また正しくアイヌ文化を伝えていくことが目的ゆえ、1作品ごとに大学教授や学芸員などアイヌ文化の専門家などが監修に付き、確認しながらの作業となるという。高橋プロデューサーが「地域によっても文様や室内の作りなどが異なる。その辺りは忠実に、真実に沿って作らなければいけないのでそこが難しい」と言えば、小笠原も「初年度に手がけた作品は、アニメを作る時間よりも原画の監修の方に時間がかかっていたくらい」と語る。

 完成した作品はこうした上映イベントのほか、北海道の小中学校にDVDで配布され、アイヌ文化への理解・継承に役立てられているという。小笠原は「常に鑑賞者を意識しながら制作しています。せっかくならアイヌのことを楽しみながら学んでほしいと思いながらチャレンジしています」と作品への思いを語った。 

 なお作品は、公益財団法人 アイヌ民族文化財団のサイトやYouTubeなどでも鑑賞できる。

 同映画祭ではほか北海道出身の監督にフォーカスしたプログラム「北海道現代アニメーション総進撃!2018」もあり、地元のアニメ文化の振興にも力を入れている。(取材・文:中山治美)

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