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ハリウッド&父親に操られた人気子役が本当になりたかったもの…『ハニーボーイ』監督インタビュー

ノア・ジュープがただ愛を求めた子役を熱演
ノア・ジュープがただ愛を求めた子役を熱演 - (C) 2019 HONEY BOY, LLC. All Rights Reserved.

 『トランスフォーマー』シリーズで世界的なスターとなった後、飲酒などのトラブルで世間を騒がせてきたシャイア・ラブーフが、リハビリ施設で治療の一環として書き上げた自伝的脚本を映画化した『ハニーボーイ』。毒父(シャイア)に翻弄されながらハリウッドの人気子役として活躍した少年期(ノア・ジュープ)と、それから10年後、リハビリ施設に入ることになった現在(ルーカス・ヘッジズ)を交錯させながら描いたのは、シャイアの友人でもある、ドキュメンタリー畑で活躍してきたアルマ・ハレル監督だ。ハレル監督がインタビューに応じ、痛々しくも愛に満ちた本作について語った。(編集部・市川遥)

【画像】可愛すぎる!天才子役ノア・ジュープ

アルマ・ハレル監督
アルマ・ハレル監督

Q:シャイアが書いた脚本を読んで、これは映画にするべきと思ったんですよね? どこに最も惹かれたのでしょうか?

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父と息子の関係ね。現在がその関係にとても影響されているというのが興味深かった。それにわたしの父もアルコール依存症なの。愛しているけど、痛みを伴うものでもあって。だからシャイアが書いたこの脚本は、とてもリアルだと思った。ある意味“男らしさ”の話でもあって、それも興味深かった。彼が自分の父を演じたというのは、とても勇敢なことよ。それにこの類まれなる俳優と一緒に映画を作る機会を探していたし、そういうことが全て重なってやるべきだと思ったの。これが彼の助けになればとも願っていた。

Q:シャイアと脚本をどう発展させていったのですか?

映画の中で、彼がリハビリ施設で過去について書いているシーンがあるけど、あんな風に、彼がそこで書いたものをわたしにメールしてきて、行ったり来たり、多分50バージョンくらいあったかな。脚本作りのワークショップみたいだったの(笑)。そのプロセスから一緒だったから、お互いその過程を通して多くのことを学んでいた。だから映画を作るために集まった時には、この脚本について本当に深く理解していたわ。

Q:「少年時代」と「リハビリ施設での現在」がシームレスにつながっていたのがとても美しいと同時に、この物語を語る上で効果的だと思いました。この構造はどのようにして見いだしていったのですか?

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実は、編集の過程で見いだしていったの。脚本では時系列的には一直線な感じで、少年時代から始まって、青年のオーティスになっていくという流れだった。だけど編集作業に入ってみて、それが正しいようには感じられなくて。だから編集室でいろいろ遊んでみた。20代になって「人生はなぜこんなに滅茶苦茶になってしまったのか」と探偵のように自分に何が起きたのかを思い出そうとする、というのを形にしようとしたの。それが、わたしがスクリーンにもたらしたかったもの。わたしは映画の構造で遊ぶのがとても好きなの。ドキュメンタリーを手掛けている時からそうだった。実はわたしの次のプロジェクトは、とても興奮しているんだけど、日本でのものなの! それもストラクチャーとストーリーテリングについて作品よ。

ノア・ジュープとシャイア・ラブーフ
複雑な父子役を務めたシャイア・ラブーフとノア・ジュープ

Q:主人公の名前はシャイアではなく、オーティスにしたんですね。

なぜなら彼はシャイアではないから。オーティスなの。シャイアにインスパイアされたけれど、シャイアそのものではない。ルーカスとノアが演じて、オーティスという名前の人間を生んだの。そしてシャイアが自分自身ではなく父親を演じたことが、別のレイヤーをもたらしてくれた。観客は彼のリアルなところを見ることができる。彼は、彼が最も愛し、そして彼を最も傷つけた人物をあがきながら演じている。その全てがスクリーンにもたらされたと思う。

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Q:母親からの電話を介してノアとシャイアがやり合うシーンが素晴らしかったです。

電話のシーンは素晴らしかった。あのシーンはスタンダードな即興といったところで、シャイアがどんどんノアに言葉を投げていって、ノアがそれを全部上手に拾って答えていくという感じ。全部で9回撮って、後でそれぞれのテイクからいいものを切り出していった。母の声は女優のナターシャ・リオンに後でやってもらったの。脚本上でもとてもパワフルなシーンだったけど、それ以上のものになった。俳優たちが動きたいように動けるようにカメラを配置したの。ちっぽけな部屋での電話での会話なのに、ダイナミックさと激しさを感じさせられるものにできたと思う。

アルマ・ハレル監督
撮影監督のナターシャ・ブライエとアルマ・ハレル監督

Q:撮影監督ナターシャ・ブライエ(『ネオン・デーモン』)との仕事はいかがでしたか?

ナターシャはただただ素晴らしいわ。今日における世界最高の撮影監督の一人だと思う。彼女は常に新たなもの、どうすればそれが成し遂げられるかという解決策を発明するの。そして、とても情熱的な人。彼女だけでなく、撮影現場は激しい人ばかりだったわね。90日間で撮ったのだけど、1年もやったように感じる。皆が全てをささげてくれた。

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Q:ビジュアル的にも魔法のように美しい映画でしたが、その雰囲気はどのようにして作り上げたのですか?

ナターシャとのコンビネーションによるものね。ナターシャが、わたしが必要をするものを与えてくれて……わたしが欲しかったのは映画的であり、とてもビジュアル的なもの。“映画”はオーティスが育った遊び場でもある。わたしはピノキオというキャラクターにとてもインスパイアされたの。彼は操り人形だから常に誰かに操られている。本作のオープニングでもオーティスにハーネスをつけて、彼がハリウッド、そして父親に操られている人形だということをビジュアルで見せた。彼はただ“(父に愛される)本物の少年”になりたいだけなの。わたしはそれを捉えたかった。ノスタルジックで映画的でスウィートな世界だけど、とても残酷で現実的でもある。人生というのは対照的なものだから。

Q:映画作りにおいては、確固たるビジョンを持ってそれを達成しようと努めるというよりも、撮影現場で日々新しいものを見いだしていきたいという感じなのでしょうか?

アルフレッド・ヒッチコックやポン・ジュノのような偉大な監督たちは前者だけど、わたしはそういう風に作ることは楽しめない。毎日、自分を驚かせたいの。もちろんビジョンはあって、ストーリーボードも作るけれど、セットでそれに命を吹き込む方法を見つけるという感じ。映画の枠組みは自分のイメージのままにしたいけど、それに命を吹き込むのは魔法のようなものなの。「こんなのもあったの!?」というのがわたしを興奮させてくれる。それは恐ろしくもあるけど、わたしは編集室に行っていろいろ選ぶ方が好き。シャイアが言っていたんだけど、映画は3度作られるもので、1度目は脚本を書くとき、2度目は撮影するとき、3度目は編集するとき。それをわたしはやっているわ。

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Q:ということは編集が一番好きな過程ですか?

編集は大嫌い!(笑) 不安で神経が磨り減るし、時にはリラックスできるときもあるけれど、そこは自分の全ての失敗を観る場所でもあるから。セットでは興奮していて自信があっても、編集室はあらためて映画と顔を合わせるところ。どんな映画かということを知ることになる。だから嫌いというより、一番大変と言った方がいいかもね。だってそこで、どんな作品とこれからの人生を共にすることになるかを知るんだもの。一番楽しいパートはサウンドね。サウンドには希望と愛がある!

映画『ハニーボーイ』は公開中

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