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「ナウシカ」に起源?2人の人物の人生を融合させた宮崎駿監督の発想の根源とは?

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映画『風立ちぬ』の主人公・堀越二郎
映画『風立ちぬ』の主人公・堀越二郎 - (C) 2013 二馬力・GNDHDDTK

 7月20日に公開され、前作『崖の上のポニョ』(最終興収155億円※配給調べ)を超える大ヒットスタートを切った宮崎駿監督5年ぶりの新作『風立ちぬ』。主人公・堀越二郎には、実在した2人の人物、堀越二郎と堀辰雄の人生が反映されている。宮崎監督は、なぜ異なる2人の人物の人生を融合させたのだろうか?

映画『風立ちぬ』フォト

 堀越は、零式艦上戦闘機(通称・ゼロ戦。大日本帝国海軍が日中戦争から太平洋戦争全期にわたり使用した主力艦上戦闘機)の設計主務者として著名な人物。堀辰雄は、同時代を生きた作家だ。二人は、同じ年に旧制第一高等学校に入学し、その後東京帝国大学を卒業したという共通点があるが、交友関係などはなかったと考えられる。

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 堀の小説「風立ちぬ」は、結核を患っていた堀が、後に婚約者となる矢野綾子と共に八ヶ岳山麓の富士見高原療養所で過ごした日々を基に書かれた作品。堀の小説では、芥川龍之介片山広子の恋に着想を得て執筆したといわれる「菜穂子」の主人公も結核を患っており、この本のタイトル「菜穂子」は、映画『風立ちぬ』のヒロインの名前として採用されている。

 しかし、この時代に結核を題材に小説を書いたのは、自らも結核で命を落とした堀ばかりではない。医学博士・田尾義昭の著書「結核はいま」(文芸社刊 1997)には、「昭和16~20年の太平洋戦争によるわが国の(※編集部注:民間人の)戦死者数は約80万人に上りますが、この間の結核死亡者数もほぼ同数といわれており」との記述があり、事実、多くの著名人も結核により命を落としている。

 つまり、堀越二郎が生きた時代には身内が結核で命を落とすということは、しばしば起こったことで、宮崎監督が大正から昭和、約30年の物語を描くにあたり、堀越二郎と堀辰雄の人生を融合させたのは、その時代を知ればこその発想だったのかもしれない。

 ちなみに、宮崎監督が一つのキャラクターに2人の人物の人生を融合させたのは、『風立ちぬ』の主人公・堀越二郎が初めてではない。『風の谷のナウシカ』の主人公ナウシカは、ギリシャの叙事詩「オデュッセイア」に登場するパイアキアの王女、その名も「ナウシカ」と、古典(「堤中納言物語」)に登場する「虫愛づる姫君」のキャラクターを融合させた人物であることを、宮崎監督は「風の谷のナウシカ」のコミックス第1巻のあとがきで明かしている。宮崎監督は、自身の人生の中で触れてきたキャラクターを効果的に融合させる感性にも優れた監督なのかもしれない。(編集部・島村幸恵)

映画『風立ちぬ』は全国公開中

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