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強制収容所で行われたおぞましい人体実験…ホロコーストを描いた衝撃作の誕生秘話が明らかに

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映画『あの日のように抱きしめて』より
映画『あの日のように抱きしめて』より - (C)SCHRAMM FILM / BR / WDR / ARTE 2014

 強制収容所で顔面を破壊される重傷を負いながら奇跡的に生還したユダヤ人女性の数奇な運命を描いたサスペンス『あの日のように抱きしめて』のドイツ人監督クリスティアン・ペツォールトが、本作が誕生した衝撃的な舞台裏を明かした。

【写真】顔面崩壊、整形、強制収容所からの生還……ホロコーストの悲劇フォトギャラリー

 本作の主要登場人物は、整形手術を経て夫のもとに戻ったユダヤ人女性ネリー、「妻は(収容所で)死んだ」と信じて疑わず、ネリーに妻のふりをさせることで妻の遺族の財産を手に入れようと持ち掛けるドイツ人の夫ジョニー、そして収容所から生還した人々を支えるユダヤ人機関に所属する女性レネ。立場の異なる三者の視点から、ユダヤ人虐殺の悲劇を浮き彫りにしたところが秀逸だ。

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 本作はカナダ、イギリス、フランスでは評価されたものの、肝心のドイツでは批判されたという。その背景には、ドイツ人がタブーとしていた歴史の暗部に踏み込んでいることにある。ペツォールト監督はその理由を「この時代を(ドイツの)皆が嫌いなんだろう。ナチスについての映画は量産されているし、ドイツの役者は好んでナチスの役をやり、ユニフォーム(ナチスの制服)やドイツ的な話し方を好むかもしれない。でも、(ドイツにおける戦争の)“その後”を描いたもの、犠牲者についての映画もほとんどない。それは(ドイツ人の)罪の意識からくるものなのではないだろうか」と分析。

 さらに、「わたしの母の家族はナチだった。歴史的にもドイツでは、1933年から1945年までの間はまるでブラックホールのように、存在しないかのようにされていた。だから、わたしが子供の頃に母に当時のことを聞いても何も答えてくれなかったんだ」とドイツ人にとって、ヒトラー政権時代は忘れたい過去であることを強調する。

 また本作の特筆すべき点は、ヒトラー政権下でドイツ人とユダヤ人の結婚を禁止する政策「ニュルンベルク法」を背景としたところ。この「ニュルンベルク法」を題材にした理由について、ペツォールト監督は衝撃的な事実を告白した。それは、強制収容所のユダヤ人囚人で人体実験を繰り返したヨーゼフ・メンゲル博士が小説に書いた、ある実験のこと。ペツォールト監督は「放射能を使って子供が生めない状態にされたユダヤ人の若い女性と、その恋人を閉じ込めて愛し合わせ、妊娠するかを実験した。しかし二人の感情は完全に破壊されており、愛はすでに失われて実験は失敗に終わった」と小説に書かれた恐ろしい実験内容を語り、「『あの日のように抱きしめて』では大きな抑圧の下で破壊されてしまったものを再構築できるかどうかを描きたかった」と本作のテーマを解説する。

 死ぬことよりも生きる方がつらいかもしれない。そう思わせる3人の悲しい生きざまには、「逃れようとしても逃れられない過去」を突き付けるペツォールト監督の真摯(しんし)なメッセージが込められている。(編集部・石井百合子)

映画『あの日のように抱きしめて』は8月15日よりBunkamuraル・シネマほか全国順次公開

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