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「メタルギア」小島秀夫監督「サイレントヒル」でハリウッドとタッグ!新作ホラー「P.T.」で切り開く未来とは!

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小島監督

■「メタルギア」小島秀夫監督がデル・トロとタッグ!“遊べる予告編”ホラー「P.T.」で切り開く未来とは!

 8月、謎のPS4向けホラーゲーム「P.T.」の配信がPlayStation Storeで開始された。薄暗い廊下を一人称視点で探索していく同作でプレイヤーに許されているのは、目の前で起きる恐怖を見ることのみ……。配信から1か月以上が過ぎた今もクリア条件は解明されておらず、その正体不明の恐怖は、ホラーゲームに慣れていたプレイヤーたちを震え上がらせた。

P.T.
すべてが“わからない”謎の世界観がプレイヤーを震え上がらせた

 制作は「7780s STUDIO」という謎のゲームスタジオとされていたが、その正体は「メタルギア ソリッド」(KONAMI)シリーズで知られる小島秀夫監督が率いる小島プロダクション。そしてタイトルの「P.T.」は「Playable Teaser」の略であり、伝説的ホラーシリーズ最新作「SILENT HILLS」のティザーゲームであったこと、さらに映画『パシフィック・リム』ギレルモ・デル・トロ監督と海外ドラマ「ウォーキング・デッド」ノーマン・リーダスが参加することが明らかになると、世界中のゲーマーを歓喜の渦に巻き込んだ。

 ゲームにしかできない「Playable Teaser」(遊べる予告編)という新たな試み。そしてハリウッドのトップクリエイターたちとのコラボレーションの実現、その挑戦の先に何を見据えているのか。小島監督が語った。(取材・文:編集部 入倉功一)

■わからないからこそ怖い!

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P.T.
暗い廊下を歩くだけ。だが最上の恐怖がプレイヤーを待つ。

Q:「P.T.」ですが、歩くだけなのに本当に怖くて難しくて。クリアできていないユーザーもかなりいるようですが。

最後は一人では難しいでしょう。例えば、ゲーム中で霊に殺される場面があるんですが、あれは絶対死ぬようになっているんですよ。今までのゲームだと、皆さんあれをバッドエンドっていうふうに理解するじゃないですか。そういうミスリードをさせているだけで、絶対に死ぬんです。

Q:廊下に置いてあるラジオから「後ろを向け」という声がしますよね。普通はそこで振り向くと死ぬのかと思います。

そういうふうに思うじゃないですか。だから今までいっぱいゲームをやってきた人ほど怖いんですよ。今までの経験とかルールが通用しないので、何じゃこりゃ! となる。しかも一人がクリアできたからといって、同じことをやっても解けない。そうやって(わからないからこそ)怖くなるというのを、半分意図的にやっています。もう半分はスタッフもわかっていなかったっていうのがあるんですが(笑)。

Q:実況動画などでは、ユーザー同士がコメントでクリア方法を教え合ったりしていますよね。

そういったフラグの中に、どうでもいいものもいっぱい仕込んであるんです。これとこれを足したら次への扉が開くというような、そういった経験を皆さんが普通のゲームでしている。でも、すでに経験していることって怖くはないんですよね。それが通用しないから混乱する、怖い。もともと「P.T.」は、誰が作ったかも、どんなゲームかもわからなくて情報もない、というところで始めたんです。その恐怖というのは、(有名タイトルである)「SILENT HILLS」では演出できない。例えば僕は映画ファンなので、アルフレッド・ヒッチコック監督が撮ったホラーといわれて、グレース・ケリーのように知っている俳優が「キャー!」とやったって怖くないんです。けど、夜中にテレビでやっているような、名も知らないイタリアンホラーとかだと、予備知識がないから怖い。そこを狙うために「P.T.」を作ったんです。

Q:キャラクターのアクションが少ないのも特徴的です。前に行く後ろに下がる、カメラ(視点)を振る、ズームするだけで、あとは何もできない。

P.T.
一見何の変哲もない世界に……

僕は怖がりなんですが、中でも一番怖いのが悪霊とか悪魔『エクソシスト』『オーメン』『四谷怪談』とか怖いじゃないですか。昔から映画マニアだったんですけど、どうしてもホラーは観られなかったんです。でもある日、ジョージ・A・ロメロ『ゾンビ』を観たら、全く怖くない。グロテスクではあるけど、アクションサスペンスですからね。それまでのホラーっていうのは、ゾンビが出てきたとしても、か弱い女の人が洋館に閉じ込められてゾンビに追われて逃げるっていうゴシックホラー。でも『ゾンビ』はSWATが銃でゾンビの頭を撃っていくっていう。それからスプラッターとかは観られるようになったんです。でも触れることもできない霊体には何もできないですよね。武器を持っていても戦えなくて、そこが怖い。

Q:最近の映画でいえば、『死霊館』を観たときの怖さを思い出しました。

僕も最近観た映画で一番怖かったのは『死霊館』です。その前は『REC/レック』なんですよ。特にラスト。行きたくない場所に行くと、あるものが出てくるという場面なんですけど、普通は顔を背けたり目を覆ったりするけど、何かよくわからないものが動いているからぐっと見て、それで初めて何なのかわかるという、目をそらすのではなく、怖いから見に行くという恐怖があるんです。だから「P.T.」でも壁にのぞけるような穴が開いていたり、ドアの隙間を見たりっていう要素を意図的に入れています」

■ゲームにしかできない実験

P.T.
いまだクリアできないプレイヤーも!

Q:これがあくまでティザーで、「SILENT HILLS」本編のゲームとも関係がないというのにも驚きました。

「P.T.」って何の略ですかと言われて、「Playable Teaser」ですよって言ったらみんなガッカリするんですよ(笑)。「7780s STUDIO」というスタジオ名も、サイレントヒルということで、静岡県(サイレントヒル)の面積ですから。

P.T.
誰もやっていないことをやる! 小島監督の姿勢は変わらず!

Q:体験版でもない、これまでになかった試みですよね。どこから発想を得たのですか?

どこからというか、いつもそんなことしか考えていません(笑)。やったもん勝ちです。人のやっていないことをしたいので。だから評価はされませんけどね。(無料ダウンロードなので)なんぼもうかるんだと言われたらおしまい。でも、今後同じことを誰かがやって、2番手3番手で成功したとしても、僕はもうその時点では興味はないです。

P.T.
プレイヤーは幾度もこの部屋を目にすることに……

Q:映画では絶対できない試みですよね。

映画は映像だからティザーがあって予告編がある。一方のゲームはインタラクティブなメディアなのに、やっぱりティザーも予告編も映像なんですよね。それが面白くないなというのがあった。それと、プレイできるティザーというふうにすると、僕らが実験したいことができるんですよ。「SILENT HILLS」でKONAMIの小島プロダクションが作っているってわかると、それだけで防波堤みたいなものができてしまう。そうじゃなくて、一般の方が何かわからないものをダウンロードして、そこで本当の恐怖を体験するという実験をしたかった。実現するのは大変でしたけどね。何のタイトルかもわからないものをダウンロードはできないから、ソニーさんに説明しに行っても皆わからない。『何ですか、それ?』みたいな(笑)。今、すごいダウンロード数なんですけど、ソニーさんでもああなるとは思っていなかったみたいですね。

Q:ユーザーがプレイ動画を大量に配信したのも面白かったですね。

PS4って(コンシューマー機)全体の牌(ぱい)からするとまだそれほどではないんですよね。でも、あのゲーム機には「シェア」機能(コントローラーのSHAREボタンを押すと、その瞬間の画像・映像が生成され、SNSにアップロードすることが可能な機能)という強みがあって、スイッチ一つで、自分のびっくりする顔と一緒にプレイ実況ができる。その動画が広がって、さまざまな子を産んでいったんです。「P.T.」で検索してみたただけでも再生回数から(配信を見た人が)4,000万人くらいになったので、総勢では1億人くらい見たのかな。正確なところはわからないですけど。ほとんどの人がゲームはやっていなくて、動画を見ることで「P.T.」という存在を知っていくというのも、いままでになかった手法ですね。

■ハリウッドとのコラボ実現!意外な経緯とは?

P.T.
クリアするとノーマン・リーダス演じる主人公が!

Q:ゲームをクリアするとノーマン・リーダス演じるキャラクターが現れ、デル・トロ監督と「SILENT HILLS」の文字が出てきます。二人とのコラボにはどういう経緯が?

カイル・クーパー(タイトルバック演出などを手掛けるデザイナー)と「メタルギア ソリッド2」のときから一緒に仕事をしていて、お互いオタクなんで、会うと映画の話ばっかりなんです。そこで十数年前、食事しながら映画の話をしているときに、カイルがおまえみたいにすごくオタクなヤツがもう一人いるぞと。当時カイルは、デル・トロ監督の『ミミック』という映画の素晴らしいオープニングを作っていて、おまえらはオタク同士だから仲良くなれるって、彼を薦めてくるんですよ。その後、偶然「メタルギア ソリッド3」のときに、デル・トロからコメントをもらって、『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』で来日したときに会いに行って、アメリカでも会ったりして……お互い、会うと『あれ観たか! あれ観たか!』って言い合う関係になったんです。分野は違いますけど、彼はゲームも好きでホラーも好きですし、「SILENT HILLS」をやるっていうとすごく喜んでくれて。『パシフィック・リム』で対談した後だったかな? 一緒にやろうとは言っていたけど、具体的なタイトルを伝えたのは、あの後かもしれません。

Q:ノーマンさんともお知り合いだったんですか?

実はノーマンは『ミミック』で本格的にデビューしているんです。あれがほとんど初めての映画で、デル・トロ的には俺が大きくしてやったぜと(笑)。『ブレイド2』にも出ていますからね。僕はノーマンの『処刑人』「ウォーキング・デッド」も好きで、どうしても起用したかったので、デル・トロと食事に行ったときに紹介してって言ったら、その場でいきなりメールを送って、本人からOK! って。

Q:そんなシンプルな経緯なんですか?

電話番号とかメールがわかったら、もう直で連絡をするんです。ハリウッドの監督ってそうなんですよ。まず本人に直接会って口説き落とすのが監督の仕事。その後でエージェントを通すんです。日本では代理店を通したりしますけど。

P.T.
ノーマン演じる主人公が霧の街へ……

Q:映像はいつ撮られたのですか?

あれはノーマンが日本に来たときに、日本のスタジオで僕が撮ったものですね。ティザー用に実験で撮ったものなので、(表情などを読み込む)フェイシャルキャプチャーまではやっていないですけど。本番では本格的にパフォーマンスキャプチャーでやります。

Q:では完全にノーマン・リーダス主演の小島秀夫監督作ですね。

デル・トロも監督なので、ケンカしながらやることになると思いますよ。周りから、何やってんねんおまえら! って言われながら(笑)。でもそんなに時間はかけません。ホラーなんてお金掛けたらいけないですよ。ハリウッド映画だって(製作費)5億円とかの世界ですからね。それで300億円とか稼ぎますから。

Q:そこは映画の世界と同様にということですね。

「メタルギア」もそうですけど、今のゲームってバジェットもお金も掛かる。それこそハリウッドのトリプルAのタイトル『スパイダーマン』シリーズとかね、そういうものになりつつあるんです。結構リスクが高い。まだ「メタルギア」のようなゲームは世界中で売って回収できるからいいんですけど、そうじゃないものはどうするかというと、映画界ではテレビシリーズに移行していますよね。パイロット版の予算だけで撮って、良ければワンシーズン、視聴率が良ければツークールできるというシステムなので、企画してからすぐ撮れる。だからかなりの才能が映画から入ってきている。その形を借りて、例えば日本だけでも売れるというものを作るという、そういった実験も「SILENT HILLS」でできるのかなと思っています。

P.T.
サイレントヒルの恐怖はすぐそこに!?

Q:では監督としても、そういったしがらみから自分を解放しようという狙いがあるんですか。

そのはずだったんですけど、なかなか「ファントムペイン」が終わらなくてですね(笑)。マップが広くてできることも多いので、ここでこういうことをしたらどうなるの? という、デバック作業にものすごい時間がかかる。一方、「SILENT HILLS」なんて何の必要もない。もうそこは楽勝です(笑)。だからものすごく早くできると思います。ただ「P.T.」はティザーだから、本編はもっと怖くないといけないじゃないですか。でも「SILENT HILLS」で僕らが作っています、デル・トロも監督でノーマンが出ていますって言ってしまっているので、その時点でかなり怖くない(笑)。だから、普通に作ると怖くないんですけど、ここはさすが小島秀夫(笑)、あれ以上のものを作るために、普通に作りません。でも最後にはしっかり「SILENT HILLS」になっていくという、攻め方でやっていきます。あとはもう、デル・トロがいい意味でどれだけ邪魔をするかですかね(笑)。

Q:今後映画の分野でデル・トロ監督と組む可能性はありますか?

何も決まっていませんけど、あるといいですね。海外の大量生産をしているような作品って、そこに作家性はないんですよね。よくあるハリウッド映画だと、売れ線の続編企画のような。そこに個性を入れられると困るんですよ。デル・トロなんかには作家性がありますけどね。ゲームもそういう方向で売れているものばかりで、逆にそういうものを受け入れて作る人が求められる。だから海外の大手なんかは、僕のことは要らないはずですよ。違うゲームにしてしまうので。一方で、インディーズが力をつけてきているので、セールス的にはともかく作品の作家性・中身ではインディーズが上に行く時代が来ると思います。あとはユーザーが作家性のあるものがいいのか、大量生産のものがいいのかという話になってくるでしょう。

■コジプロはゲーム界のジブリだった?

P.T.
ゲーム界のジブリともいえるコジプロを率いる小島監督

僕ね、いつも部下にチャンスを与えてないって言われるんですけど、何回もチャンスは与えているんです。結局うまくいかないんですわ(笑)。例えば、一本だけならじっくり創った方がいいものはできるんです。3年とかかけてね。でも会社としては年間で収益が上がらないと、横並びで見たら良くない。なので、悪い言い方をすると別ラインで並行して違うものを創ったり、違う企画を部下に持っていって、これなら創れるでしょっていうのを回していたりね。そこで以前、宮崎駿監督の引退でスタジオジブリの動向が話題になりましたよね。言われてみて思ったんですが、コジプロはジブリと少し似ていたなと。だから今回は、「SILENT HILLS」みたいなものもありますよっていうことも見せたいと思っているんです。インディーズの人たちも、テクノロジーやツールを与えられると同じようなものができるというね。

「P.T.」はPlayStation Storeで配信中 オフィシャルサイト

小島プロダクションオフィシャルサイト

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