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コロナ禍を予言していたドラマが…!

 世界中に広がる新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行直前、パンデミックをテーマにしたテレビシリーズが、カナダで制作されていた。現在のコロナ禍をほぼ完璧に予言したかのようなその内容とスリリングな物語は一躍話題となり、1月~3月期における本国での視聴率No1を記録。パンデミックが浮き彫りにする人間の弱さ、感染の恐怖、そして終息への希望を圧倒的なリアリティーで描いたそのドラマが「アウトブレイク-感染拡大-」だ。

新型コロナウイルスの脅威を予測していたドラマ

新型コロナウイルスの感染は静かに拡大していく……

 「アウトブレイク-感染拡大-」が初放送されたのは2020年1月7日。折しも、新型コロナの世界的な流行と重なるように、本作はスタートした。『コンテイジョン』(2011)や『アウトブレイク』(1995)など、コロナ禍のなかで多くのパンデミック映画が注目を浴びたが、本作ほど、現在の出来事をトレースするかのように進行するドラマはないだろう。

 舞台は、総人口340万人を誇る、カナダ・ケベック州モントリオール。ある時、公園に集まるホームレスの間で謎の病気が広まりはじめる。病にかかった人々は細菌性の肺炎に苦しみ、一部の患者は身体中の臓器にダメージを受けて死亡する。謎の感染症に戦慄するなか、PCR検査で判明したその原因こそ、新型コロナウイルスだった。

 CoVA(コヴァ)と名付けられたウイルスは強い感染力を持ち、認可された抗ウイルス薬も効果がなく、治療は対症療法のみ。何も知らない感染者にとっては、重い風邪や季節性のインフルエンザにしか思えないことから、病院や人が密集するパーティーで、集団感染(クラスター)を引き起こしてしまう。

濃厚接触者に次々と感染してくウイルス。華やかなパーティーのシーンにも緊張が走る

マスク不足も予言!驚異の一致

感染拡大を防ぐために奔走するアンヌ=マリー・ルクレール

 感染予防のために政府が呼びかけるのは、人が密集する場所を避け、人との距離(ソーシャルディスタンス)を取り、手洗いを徹底すること。今まさに叫ばれている感染予防策そのものだ。さらに、最近まで世間を騒がせた、飛沫感染を防ぐマスクの不足から、そのマスクを占有して高額転売しようとする輩まで登場。有効な治療薬として、臨床試験前の未承認薬が特攻薬として期待されるなど、エピソードを重ねるごとに、現実とドラマの境はあいまいになっていき、並みのサスペンスドラマでは味わえない緊張感が漂う。

 この危機に対応するのが、政府医療研究機関・緊急衛生研究所の所長で感染症専門医のアンヌ=マリー・ルクレール。感染源を求めて調査を進める所員たちの姿は、まるでスパイ映画のエージェントのよう。ウイルスという見えない敵を相手に、緊迫のチェイスがシリーズを通して描かれる。

 パンデミック描写は、ケベック州の公衆衛生研究所にアドバイスを求めるなど、綿密なリサーチによるもの。アンヌ=マリーは、職場から帰宅すると玄関で靴を脱ぎ、すぐに衣服を脱いで洗濯し、指の間までしっかりと手を洗う、この数か月で世界中の人々のルーティンとなった生活習慣が身についているが、これも撮影に実際の感染症専門医が立ち会うなど、リアルな描写にこだわった賜物。専門家お墨付きのパンデミック描写は、それが正確な予測として現実になった今だからこそさらに恐ろしいが、同時に生活に役立つウイルス感染予防のヒントも散りばめられている。

本当に怖いのはウイルスか人間か

ウイルスには人種も年齢も性別も関係ない。差別するのは人間だけだ

 本作をさらにリアルなものにしているのが、老人から7歳の子供まで、老若男女問わず感染するウイルスの恐怖と共に、回復した元感染者への偏見や、本来はウイルスと無関係な特定の人種への差別など、今まさに現実社会で浮き彫りとなっている、人間のおろかさを描いた点だろう。

 ドラマでは、最初に確認された感染者が先住民族イヌイットのホームレスだったことから、CoVAに”イヌイット・ウイルス”という俗称がつけられてしまう。この名称はマスコミを通じて瞬く間に広まり、ホームレスへの差別を助長するだけでなく、「イヌイットに近づいていないから自分は安全」という恐ろしい誤解を招く事態に。特定の人種にウイルス名を付けて呼称することで起きる弊害だ。対策にあたる緊急衛生研究所のスタッフは言う「スペイン風邪の発生源はどこか知っている? アメリカよ」

 全10話のシリーズだからこそ描ける、厚みのある人間ドラマも見どころだ。主人公のアンヌ=マリーは、医師の夫マルクと娘のサブリナとの三人家族。高校卒業を控えるサブリナも両親と同じく医師を目指しており、家族そろって幸せな将来が待っているかに思えたが、夫のマルクと勤務先の救急医クロエとの不倫が発覚。ショックを受けるアンヌ=マリーに、感染者の治療にあたったクロエのウイルス感染が知らされる。マルクからは、何としてもクロエを救ってほしいと懇願される始末。仕事とプライベートは別と割り切りながら、人命を救うために、キャリアをかけた危険な賭けに出る。

感染した人々は次々に命を落としていく

 そんな彼女をさらに追い詰めるのが、コロナ対応をめぐって衝突する、政府のローラン・ドゥメール公安大臣。アンヌ=マリーに厳しくあたる一方、私生活で同性パートナーと暮らすドゥメール大臣は、二人の子供の代理母となってくれた女性の出産を心から待ちわびているが、そんな彼らにも、ウイルスによる残酷な運命が待ちうける

 そして、踏んだり蹴ったりのアンヌ=マリーを誠実に支えるのが、偶然、街中の事故で彼女と知り合ったイヌイットの女性ネッリだ。彼女は、ウイルスの初期感染者となったホームレス女性のいとこで、多剤性結核菌の研究を博士課程で学んでいる大学院生のインターン。その知識を生かして、イヌイットとの通訳として感染源の特定になくてはならない存在になっていく。

希望を指し示すのもまた、人とのつながり

 他人との接触を避けることが求められるコロナ禍において、人と人とのつながりは危険なものと思われかねない。しかし本作が描くのは、残酷な運命だけではなく、感染源を特定するきっかけとなり、医療現場で奮闘する人々を支えるのもまた、人との出会いやつながりであるということだ。反響を受け、本国ではすでにシーズン2の制作も決定。ストレスと不安と恐怖に支配されそうな状況のなか、コロナ禍を乗り切るため、人々が大切にするべきメッセージを届けるシリーズとなるはずだ。(編集部・入倉功一)

「アウトブレイク -感染拡大-」は7月3日(金)よりAmazon Prime Video他、順次配信開始
「アウトブレイク -感染拡大-」公式サイト

「アウトブレイク -感染拡大-」予告編

(C) Sphere Media 2016 inc.

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