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恒松祐里「全裸監督」で女優16年目の覚悟

「全裸監督」新ヒロイン・恒松祐里、自分の葛藤を混ぜながら演じた Netflix「全裸監督 シーズン2」インタビュー » 動画の詳細

 6月24日より配信がスタートするNetflixオリジナルシリーズ「全裸監督 シーズン2」で、山田孝之演じる伝説の男・村西とおる監督を虜にする新たなヒロイン・乃木真梨子役に抜てきされた女優の恒松祐里(22)。今年は、NHK連続テレビ小説「おかえりモネ」でヒロインの幼なじみ役も務めており、その演技に対する意欲的な姿勢は目を見張るものがある。子役時代にデビューしてから16年、キャリアを重ねるごとに着実に役幅を広げてきた恒松が、本作出演にいたるまでの葛藤、刺激に満ちた撮影現場、さらには自身が目指す女優像について語った。

【動画】インタビューの様子

 全8話からなる本ドラマは、シーズン1に続き映画『百円の恋』などの武正晴が総監督を務め、俳優陣も山田をはじめとするレギュラーメンバーに加え、恒松、渡辺大知MEGUMI西内まりや吉田栄作伊原剛志宮沢りえら豪華ニューフェイスが加わり、村西の転落編とも言うべき後日譚を壮大に描く。平成の始まりと共にアダルトビデオ業界の頂点に立った村西監督。だが、その後ヒット作に恵まれず、エース女優・黒木香(森田望智)との共演を先延ばしにしたことから二人の間にも溝が生まれる。衛星放送事業に乗り出した村西は、古参のスタッフも徐々に離れていく中、社長の川田(玉山鉄二)が街でスカウトした元化粧品会社・美容部員の乃木真梨子(恒松)に惹かれていく。

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一番悩んだのはラブシーン

「全裸監督 シーズン2」より乃木真梨子(恒松祐里)&村西とおる(山田孝之)

 シーズン1からファンだったという恒松は、「村西とおるの山あり谷ありの人生の中で、濃厚なキャラクターたちがぶつかり合って物語が進んでいくところがすごく面白かった」と声を弾ませる。ところが、その世界にいざ自分が「入る」となると、話は別。乃木役のオファーが届いた時、「逃げたい、でも、逃したくない」という葛藤があったという。「やっぱり、一番悩んだのはラブシーンですよね。必要であれば、わたし自身、脱ぐことに抵抗はなかったんですが、いつか自分が結婚して、子供が生まれて、自分一人の人生じゃなくなったとき、『この作品がどう影響してくるんだろう』ということをすごく考えてしまって」と当時を振り返る。

 決断できず、一時期、苦しみもがいていたという恒松。彼女の背中を押してくれたのは両親だった。「同じくシーズン1のファンだった両親に相談してみたら、『面白い作品だから、挑戦してみてもいいんじゃない』と言ってくれたんです。しかも、世の中は、この先どうなるかわからないコロナ禍。こんな状況の中で、大きなチャンスをいただいているのに断ってしまうなんて『もったいない!』という気持ちが強くなってきて。最終的には『絶対に挑戦したい!』という前向きな気持ちに切り替わり、オファーを受けさせていただきました」。子役時代から200回以上オーディションを受け続け、運命の転機となる映画『くちびるに歌を』(2015)で大きな役(新垣結衣演じる音楽教師の生徒役)を勝ち取るまで、苦汁を味わい続けてきた恒松。チャンスをつかむことがいかに大変かを身にしみて経験しているというバックボーンも、彼女を奮い立たせた要因かもしれない。

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実在の人物をフィクションで演じる難しさ

先輩女優の黒木香(森田望智・写真中央)、乃木真梨子(恒松祐里・写真右)

 今回、恒松が演じる乃木は、村西が心惹かれ、自らも彼に運命的なものを感じる新たなヒロイン。登場する女優たちの中でも清楚でピュアな印象だが、演じる上で、「現実とフィクションのバランスを取るのが難しかった」と恒松は胸の内を明かす。「実在する人物でありながら、物語はオリジナルなので、そこのバランスをどう取るか。ご本人にあまりにも寄せ過ぎたらフィクションにならないし、寄せなければ乃木ではなくなってしまうし。さらに、(村西が立ち上げた映像制作会社ダイヤモンド映像の看板女優である)黒木さんの地位を脅かし、女の野望みたいなものもにじみ出すシーンもあるのですが、ここもどのくらいのサジ加減で表現すればいいのか……その辺りでかなり悩んだのは確かですね」。

 恒松の言う通り、シーズン2では黒木にとって乃木が脅威となっていく。一方、乃木にとって、黒木は憧れの先輩でありながらも、心の底では複雑な感情が渦巻いている。そんな心情を恒松は、こう分析する。「乃木は、村西に対して本能的に惹かれる部分があって、彼と関わり、作品を撮ってもらうことで、何か化学反応が起きるかもしれない、という気持ちがあったと思うんです。でも、そこに大きな壁として黒木が立ちはだかっていた。彼女が不意に『あなたの思い通りになったわね』と言うシーンがありますが、結局、この言葉が乃木の心の底にあった野心を目覚めさせ、背中を押したんだと思うんです」

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 懸念していたラブシーンは、逆に「緊張はまったくなかった」という恒松。「実際に現場に入ってしまうとやることが多過ぎて、悩んでいる暇もないんですよね。例えば、体の向き、顔の表情、声、セリフを吐くタイミングだったり、すべて振りが決まっているので、まるでアクションシーンを撮っているみたいでした」とニッコリ。「撮影が終わったあと、ふと頭に浮かんだのが、ジャグリング。ものすごい量の球をジャグリングしながらループしている感じ。途中、『あ、ボール落としちゃった!』と思っても、『投げ続けなきゃ!』みたいな(笑)。でも、センシティブなシーンなので、リハーサルは1回のみ。すぐ本番に入ってしまうので戸惑いながらも突き進むしかなかった」と撮影当時を振り返った。

「全裸監督」を乗り越えてちょっぴり自信がついた

恒松祐里

 近年、恒松の女優に対する意欲的な姿勢は目を見張るものがある。昨年11月に公開された映画『タイトル、拒絶』では、心に闇を持つNO.1風俗嬢を熱演。今年は研修医を演じたドラマ「泣くな研修医」のほか、朝ドラ「おかえりモネ」でヒロインの幼なじみで都会スレした等身大の女子大生を好演。「おかえりモネ」では、なんと黒木役の森田と現場を共にし、「何だか不思議な感じだね」と声を掛け合ったのだとか。「(「全裸監督」は)もう撮了し、映像も観ていたので、お互いに感想を言い合ったりもしました。作風も役柄もぜんぜん違う環境の中でお話をしていると、改めて女優って面白い職業だなぁって思いましたね」

 本ドラマを乗り切って、「ちょっぴり自信がつきました」と笑顔を見せる恒松。「現場での過ごし方も、少しはどっしり構えられるようになりましたね。子役からやっているので16年目ではあるのですが(笑)、やっと新人女優という立ち位置から少しステップアップできたのかな、という手応えもありました。それに、ここ最近、いろんな役に挑戦させていただけるようになりましたが、その中で不思議と『自分がやってみたい』と思う作品に出会えているんですよね。今後も、心に傷のある方、悩みを抱えている方の気持ちに寄り添える、あるいは勇気づけられるような作品と、もっともっと出会えたらうれしいですね」

 もしかすると、作品が恒松の磁力に吸い寄せられているのだろうか? 気負いがなく、自然体であるがゆえに、今後の活躍がますます楽しみだ。(取材・文:坂田正樹)

Netflixオリジナルシリーズ「全裸監督 シーズン2」は6月24日より全世界独占配信

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