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大杉漣さんの最後の主演作が日本語バリアフリー字幕で上映

大杉漣さんの最初で最後のプロデュース作『教誨師(きょうかいし)』 を日本語字幕付きで特別上映。
大杉漣さんの最初で最後のプロデュース作『教誨師(きょうかいし)』 を日本語字幕付きで特別上映。 - (C)「教誨師」members

 故・大杉漣さんの初プロデュース作であり、最後の主演作となった映画『教誨師(きょうかいし)』(2018)が、このほど都内で開催された第2回東京国際ろう映画祭で日本語バリアフリー字幕付きで特別上映された。同作の日本語字幕付き上映は初めてで、聴覚障害者などが鑑賞を楽しんだ。

 映画界では、障がいを理由とする差別の解消の推進に関する法律」(障害者差別解消法)が2016年に施行されたことに伴い、映画館で音声・字幕ガイド専用アプリUDcastを活用した言語バリアフリーサービスが実施されている。しかし、音声・字幕制作費用が別途かかることから、対応している作品は大手映画会社の作品が中心。インディペンデント作品や予算の厳しい作品は、要望があってもなかなか実現できないのが現状だ。

第2回東京国際映画祭参加ゲスト
クロージング・セレモニーに参加した第2回東京国際映画祭参加ゲスト。撮影:中山治美

 そこで同映画祭では、独自で日本語バリアフリー字幕制作と上映を実施。2017年に開催された第1回では、園子温監督の代表作『愛のむきだし』(2008)をセレクション。237分の大作で、膨大なセリフ量と格闘しながら初の日本語字幕付き上映を実現させ、園監督もアフタートークに駆けつけた。

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 そして第2回で選んだのは、2018年に急逝した日本を代表するバイプレーヤー大杉漣さんが教誨師を演じ、密室での死刑囚との言葉の応酬がスリリングな『教誨師(きょうかいし)』だった。

 同映画祭実行委員会代表の牧原依里さんは「大杉さんの最後の主演作ということで楽しみにしていた作品だったのですが日本語字幕がなく、配給会社に問い合わせたところ今後も予算の関係で制作の予定がないということでしたので、台本提供のご協力をしていただき、上映を快諾していただきました」という。

牧原依里
東京国際ろう映画祭の実行委員会代表の牧原依里さん。撮影:中山治美

 バリアフリー日本語字幕上映は、通常の日本語字幕とは異なる。音楽がかかっている場面には音符マークが入り、ドアの開閉音など物語に必要な生活音の説明もある。最も重要なのはセリフ部分の表記。映画にはところどころにスクリーンに写っている人物に、別の人のセリフが被される場面がある。聴覚障害者は声で判断できないため、その場合はセリフ部分の冒頭に()で役名の注釈が入る。文字情報でスクリーンの状況を想像してもらう工夫がいたるところに施されている。

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 同映画祭では他に、中国のドキュメンタリー映画『手話時代』(2010)の手話弁士付き上映を開催した。同様の試みは東京フィルメックスや、横浜の映画館「シネマ・ジャック&ベティ」などでも定期的に行われているが、日本の映画界での理解はまだまだ浸透しておらず上映の許諾が得られなかったり、せっかくバリアフリー字幕を制作しても、その後なかなか活用されていないという課題もある。

 シネコンなどでUDcastが普及されてきたとはいえ、視聴覚障害者にとってはスクリーンを見ながら、手元のスマホで字幕を追うのは困難さが伴う。さらに昨今のハリウッド大作の多くは日本語吹替版の上映が中心となっており、聴覚障害者は日本語字幕付き上映回を探すのに苦労しているという。それだけに本映画祭の開催意義は大きく、牧原さんは「今後も、ろう者に多様な映画作品に触れてもらうべく、バリアフリー字幕制作と上映を継続していきたい」と語っている。(取材・文:中山治美)

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