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日本ならではの匠な職人を追ったドキュメンタリー、製作者らが語る

左から、製作者のルパート・マコーニック、製作総指揮のアンディ・ロバーツ、そして脚本家のデイヴ・ベッドウッド
左から、製作者のルパート・マコーニック、製作総指揮のアンディ・ロバーツ、そして脚本家のデイヴ・ベッドウッド

 卓越した技術を持った日本人の職人たちを描いた映画『タクミ:ア・60,000・アワー・ストーリー・オン・ザ・サバイバル・オブ・ヒューマン・クラフト(原題) / Takumi: A 60,000 Hour Story on the Survival of Human Craft』について、脚本家のデイヴ・ベッドウッド、製作者のルパート・マコーニック、製作総指揮のアンディ・ロバーツが、11月11日(現地時間)、ニューヨークのソーホー・グランド・ホテルでインタビューに応じた。

【作品写真】すし職人の匠に迫ったドキュメンタリー

 本作は、AI(人工知能)がわれわれの社会に浸透し始めた中で、手作業で匠の技を極める職人たちの日々の生活を追いながら、人ならではの繊細な技術や判断によって、人間の輝く可能性を追求するさまを映し出したドキュメンタリー。映画内では、数少ない宮大工として伝統を守る金剛組の木内繁男さん、自ら山菜や野草を摘みに行く美山荘の料理人の中東久人さん、現代切り絵アーティストの小島奈保子さん、トヨタのレクサスの製造過程の最終検査人の菅沼克昭さんらの職人を捉えている。監督はクレイ・ジーターが務めた。

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 デイヴはコピーライターの仕事で、トヨタのレクサスの製造所で働く人たちと出会い、(ほぼ機械作業だが)彼らが手作業で仕事をするのを見たそうだ。「そのとき、初めて『匠』という言葉を耳にして、彼らに興味を持ったんだ。その後、職人について僕ら製作陣で話し合って、その『匠』の技を極めた人を、より幅広いフィールドにわたって描こうと思ったのが今作の始まりだよ」と製作経緯を明かした。

 では、一体どのように先述の職人たちを集めたのだろうか。「まず僕らは、ジャーナリストで構成されたドキュメンタリーのリサーチチームを作ったんだ。その中で、極力興味深い性格の職人を探すことにしたんだ。たとえば、(インタビューに答えないような)職人かたぎが過ぎてしまう人は避けたり、まだあまり西洋で理解されていない仕事をする職人を選んだりね」とルパート。20人ぐらいの職人を選考した後、今作に登場する職人を厳選したそうだ。

 例えば、フランスの三つ星レストランで修行した経験を持ち、美山荘の料理人を継いだ中東さんについて、デイヴは「英語で言えば『ホスピタリティ』という『おもてなし』の概念は、西洋のわれわれにはとても興味深いことだったんだ。西洋では、サービスという言葉でそれと似た行動を表現するけれど、『おもてなし』という人の行動を予測して動こうとする考え方は、とても魅力的な概念だと思ったんだ」と説明する。

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 また、伝統的な切り絵から立体的な切り絵を作り、現代切り絵アーティストとして活躍中の小島さんについては、「彼女の切り絵は、信じられないくらい素晴らしいんだ。実は、僕らが撮影していたときに手掛けていたのは、実物大のシロナガスクジラの切り絵で、それが今はもう展示されているんだ(バンコク・アート・アンド・カルチャー・センターで公開されている)」とアンディが紹介。切り絵自体は歴史の長い文化の一つだが、小島さんの立体的な現代切り絵には、若者もかなり興味を示していたそうだ。

 最後に、今作を通じて観客に理解してほしいことを聞いてみると、「(匠になるためには)近道をせずに、耐えながら物事を把握し、技術を上げていく過程が大事だということだね。その過程こそが、良い技術を持っていることと同様に重要なんだ」とアンディ。そういった日本人の職人的なものの見方(時間をかけて技術を高めること)は、西洋の人たちにもとても興味を持ってもらえることだと思うと締めくくった。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)

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