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吉田羊「わたしは空っぽ」という女優業の源とは?

吉田羊
吉田羊 - 写真:中村嘉昭

 舞台女優として小劇場からキャリアをスタートさせた吉田羊。当時は「舞台公演のチケットを手売りして、1枚につき300~500円のチケットバックが日々の生活費だった」と語っていたが、現在は実力派女優として、映画やテレビドラマなど映像の世界で引っ張りだこだ。そして、映画『ラブ×ドック』では単独での映画初主演を務めることとなった。まさに充実一途の印象を受けるが、本人は「女優をずっと続けていくかを含め、先のことはわからない」と意外なことを口にする。

玉木宏、野村周平、吉田鋼太郎に囲まれる吉田羊<完成披露の様子>

 劇中で吉田が演じる剛田飛鳥は、人生の中で「計算」をしながら生きているアラフォー女性だが、「お芝居って台本をもとに行われるのですが、現場で生身の人間が動くことによって台本とは違う方向に膨らんでいくことが多い。それが醍醐味でもあるんですよね。わたしの人生もそういう感じで、予測できる未来なんてつまらないと思ってしまうタイプなんです」と自身を分析する。

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恋に不器用なアラフォーヒロインを演じる映画『ラブ×ドック』(C) 2018『ラブ×ドック』製作委員会

 とは言いつつ、小劇場から映像の世界に主戦場を移し、その実力が認められると、出演作が途切れることがない人気女優へと上り詰めるなど、そこには“演じる”という上で、明確なビジョンがあったのではないのかと思われるが「小劇場時代も、映像に移ってからもお芝居ができることが純粋に楽しいというだけで、しっかりとした目標があったわけではないんです」という回答が返ってきた。

 さらに「女優という仕事は、その年齢にしかできない表現があると思うので、一生できる仕事だと思いますが、わたし自身がこの仕事を一生やっていきたいと思っているわけではないんです」と意外な発言をする。

 その理由を「わたしは自分を空っぽな人間だと思っているんです」と説明する。続けて「自分という人間のことを自分自身が一番わかってないという思いが昔からあって。だからいろいろな役を演じることで、空っぽな自分を少しずつ埋めていっている感覚がありました。でも、その空っぽな部分が少し埋まり、これ以上自分のことを知る必要がないと思ったら、この仕事に飽きてしまうのではないかと漠然と感じています」と胸の内を明かす。

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チケットを手売りしていた小劇場時代のエピソードも

 吉田と言えば、仕事ができる上司や、理路整然と物事を判断していく役柄を演じることが多く“目的意識が高い女性に見られがち”と話していたが、自身は「本能に忠実なタイプで先のことはあまり考えていない」とパブリックイメージとの乖離を自覚している。さらに「闊達でさっぱりしたイメージを持たれますが、実は根暗なんです」と笑う。こちらも、まったく予想外の発言だが、吉田いわく「根暗な自分でも、人を喜ばせることができるかもしれないと期待しているところがある」のだという。

 次から次へと、吉田羊という女優の持つパブリックイメージとは違う“本質”が垣間見えてくるが「良いイメージを持っていただけばいただくほど、本来の自分とは違うんだよな……と申し訳ない気持ちになってしまう」と苦笑いを浮かべつつも「でも、自分の本質とかけ離れたイメージを持ってもらえるというのは、本来の自分をにじませず、役として生きられたのかなと自信になります」と胸を張る。

 その意味で、本作の公開後には、自身が「気恥ずかしさがある」と語っていた恋愛に不器用なアラフォー女性という役柄も、吉田の新しいイメージの一つとして多くの人が認識するかもしれない。(取材・文:磯部正和)

映画『ラブ×ドック』は5月11日より全国公開

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