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まさにカメレオン俳優!「エール」窪田正孝が魅せる映画7本

 NHK連続テレビ小説「エール」で、作曲家を志す主人公・古山裕一を、時にはコミカルに、時にはシリアスに、いきいきと演じている俳優の窪田正孝。その演技の引き出しの多さに驚くばかりだが、彼が俳優として積み上げてきたキャリアをひもといてみると、思わず「なるほど!」と唸ってしまう。“カメレオン俳優”という表現はあまり安易に使いたくはないが、窪田に関してはまさにこの言葉がピッタリ。喧嘩上等のヤンキーから人肉を喰うダークヒーロー、さらには純愛に目覚める余命わずかのボクサーまで、変幻自在の窪田の魅力をたっぷりと堪能できる映画を振り返る。(坂田正樹)

【写真】ブレイク前の窪田正孝が出演した映画!

『ガチバンMAX』(2010)

 映画、オリジナルビデオを合わせて23作品が製作されたヤンキーアクションシリーズ第7弾。本作を皮切りに11作品で主演を務めた窪田は、鋭い眼光とドスの効いた声、細マッチョから繰り出す強烈パンチと回し蹴りで不良道を突き進む最恐ヤンキー・黒永勇人を熱演している。「エール」の気弱な裕一とは真逆のキャラだが、「ヤンキーを完成させてビッグになりたい!」とおバカな夢を真顔で言ってみたり、通行人を恫喝しながらテッシュ配りを手伝ったり、はたまた仏頂面で女子と一緒にプリクラ撮影に興じたり……クスッと笑ってしまうズッコケぶりも同時に披露。主人公の勇人を、ステレオタイプのヤンキー像にとどまらない“愛されキャラ”へと昇華させているところが秀逸だ。

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『ふがいない僕は空を見た』(2012)

 山本周五郎賞を受賞した窪美澄の同名連作短編集を、『百万円と苦虫女』『四十九日のレシピ』などのタナダユキ監督が映画化した衝撃ドラマ。永山絢斗演じる高校生・卓巳と田畑智子演じる主婦・里美による不倫劇が軸となっているが、後半パートは認知症の祖母との貧困生活を耐え忍ぶ、卓巳の友人・良太にふんした窪田が物語を牽引。育ちの悪さを揶揄(やゆ)されると深く傷つき、逆に優しくされると「ほどこしは受けない!」と拒否反応を示す、複雑で不安定な青年の心情を繊細かつシリアスに演じている。第34回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞、第27回高崎映画祭最優秀助演男優賞を受賞、窪田が演技派俳優として覚醒した記念すべき作品と言えるだろう。

『ラストコップ THE MOVIE』(2017)

 ドイツの大ヒット刑事ドラマを、「エール」で親子を演じている唐沢寿明&窪田共演でリメイクしたギャグ満載のアクションコメディー。テレビドラマ・シリーズの劇場版となる本作は、30年の眠りから目覚めた時代錯誤の熱血荒刑事・京極浩介(唐沢)とスマホ中毒の草食系刑事・望月亮太(窪田)という凸凹コンビが、人工知能をめぐる陰謀に挑む。“刑事の勘”を頼りに破天荒な捜査を展開する先輩・唐沢に、終始振り回される窪田。カオスな現場に「早く帰りてぇなー!」と叫びながらも、ここ一番の場面では「地獄の底まで一緒だから!」とバディの絆を強調する姿にウルッ。二人のコンビ芸とも言える笑いと感動に包まれた演技合戦は、そのまま「エール」に受け継がれている。(六つ子で登場する未来の窪田も必見!)

『東京喰種 トーキョーグール』(2017)

 石田スイの人気コミックを実写映画化したアクションホラー。人間の肉をむさぼる喰種(グール)が潜む東京を舞台に、ひょんなことから半喰種になってしまった主人公・カネキ(窪田)の苦悩と変貌を苛烈に描く。「僕はいったい何者なんだ」……人間と喰種、二つの世界で揺れ動く青年の“もがき”を鬼気迫る演技で体現した窪田。徐々に喰種に傾倒していくさまは、『ジョーカー』のホアキン・フェニックスを彷彿(ほうふつ)させる。大作の単独主演を務めるのは本作が初となった窪田だが、その堂々たる座長ぶりは、俳優として大きく成長した証し。パート2となる『東京喰種 トーキョーグール【S】』(2019)では、さらにたくましくなった姿を見せてくれる。

『犬猿』(2017)

 どんなに反発し合っても離れられない兄弟姉妹ならではの愛憎を、『麦子さんと』『ヒメアノ~ル』などの吉田恵輔監督が赤裸々に描くコメディードラマ。窪田が演じるのは、地方都市で慎ましく暮らす印刷会社の営業マン・金山和成。父が作った借金を肩代わりしながらも平穏な日々を送っていたある日、強盗の罪で服役していた兄が出所し、和成の部屋に転がり込んでくる。そこから始まる兄弟の複雑な人間模様……身勝手で地道な生き方を馬鹿にする兄に対して、最初は我慢していた和成だったが、徐々に真面目キャラが崩壊し、人間のおぞましい部分も見え隠れする。これまで極端な役が多かった窪田だが、兄の存在にイラつく、ある意味とても人間くさい、等身大の青年を自然体で演じているところが逆に新鮮!

『Diner ダイナー』(2019)

 日本冒険小説協会大賞と大藪春彦賞をダブル受賞した平山夢明の小説を『ヘルタースケルター』『人間失格 太宰治と3人の女たち』などの蜷川実花監督が映画化したバイオレンスアクション。殺し屋専門のダイナーを舞台に繰り広げられる壮絶なサバイバル劇を、極彩色あふれる鮮烈なビジュアルで描き出す。窪田が演じるのは、最初にダイナーを訪れる孤高の殺し屋スキン。無造作に伸びた髪、傷だらけの顔、疲れ果てた空虚な瞳……母の写真を大切に持ち歩く優しい一面を見せながらも、自制心が崩れると一気に狂暴化し、マシンガンをところかまわずぶっ放す。下手に触ると怪我をする“腫れ物”感を、窪田は繊細なアプローチで体現する。

『初恋』(2020)

 テレビドラマ「ケータイ捜査官7」(2008~2009/テレビ東京系)で窪田を主演に抜てきした三池崇史監督は当時、「10年後に窪田を選んだ理由がわかる」と語っていたそうだが、その言葉を証明して見せたのが『初恋』だ。三池監督のもと、窪田が演じたのは、余命わずかと宣告された天才ボクサー・葛城レオ。ある日、ヤクザから逃げてきた少女・モニカ(小西桜子)を助けたことから、裏社会の抗争に呑み込まれていくが、危険にさらされながらもか弱い命を守るうちに、愛に目覚め、そして命の尊さを改めて実感する。大森南朋染谷将太ベッキー内野聖陽らツワモノたちがキャラ合戦を白熱させるなか、受けに徹した窪田は、たぎる思いを内に秘めたボクサーを力むことなくひたむきに熱演。「ケータイ捜査官7」から約10年、野心に満ちた若者は、本物の俳優へと成長を遂げた。

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